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スクープ 謝罪会見では語られなかった「問題行為」は、まだある 中坊公平顧問が辞意表明の裏 本紙だけが知っている整理回収機構「不適切な回収」の全貌 昨年末、整理回収機構は中坊公平氏が社長時代の98年に「不適切な回収」があったことを明らかにした。 本誌がこの問題を昨年から取材するなかでの、突然の発表だったが、では、整理回収機構はこの回収の問題点のすべてを公にしたのだろうか。答えは否である。本誌だけが知っている全貌を書く。
国土法を通す策略をあれこれと
昨年暮れの12月22日、整理回収機構(以下、RCC)の鬼追明夫社長は定例記者会見で、大阪府の土地売買で他の債権者に必要な情報を伏せたまま回収を進めるなど「不適切な行為」があったことを発表し、謝罪した。同時に中坊公平氏(71歳)が監督責任をとって、RCCの顧問を辞任することを申し出たことも明かした。 RCCの前身は住宅金融債権管理機構(住管)。旧住専が抱えた不良債権を処理するために国が96年につくった「国策会社」だ。その初代社長が「平成の鬼平」の異名をもつ弁護土の中坊氏。中坊氏の指揮のもと、住管は住専各社の不良債権回収にあたってきた。99年4月に社名がRCCに変わり、社長も同年8月、鬼追氏に交替している。 じつは本誌はこの土地売買を巡るRCCの回収方法に"騙し"とも言える問題行為があったという複数の証言を得て、この3ヵ月間、取材を進めていた。昨年12月にはRCCに対しても数回にわたり取材を行った。この土地売買でRCCの回収に問題があったのではないかと指摘した本誌の取材に対して、内部調査を進めていたRCCは突然、会見で「不適切な回収」を自ら公表したのである。 だが、RCCが会見で説明した不適切な回収の内容は問題行為の全貌を明らかにしたとは言い難いものだ。その全貌はどのようなものか。RCCがいまだに公にしていない部分とは何なのか。それを記す前にこの土地売買についで説明しておこう。 問題の土地は大阪府堺市の泉北高速鉄道・泉ケ丘駅前にある。旧住専から大阪で第3位という大口の融資を受けていた不動産会社・朝日住建(大阪市中央区・松本武夫社長。以下、朝住)が88年に大阪府から約56億円で購入しホテル建設を進めたのだが、バブルの崩壊で頓挫。朝住の返済が不能になり、当時の住管が融資の回収に乗り出した。 この土地は、約4800坪の区画(土地1とする)と、1に隣接する約450坪の土地(同2とする)からなる。このうち、1には明治生命(以下、明治)と横浜銀行(以下、横浜)の2社が順位1番の低当権を設定していた。RCCは経営破綻した住専の一社・住総から債権を受け継いだが、その抵当権は明治・横浜より下位だった。一方、RCCは土地2に対し1番の低当権を設定していた97年、朝住はこの土地1・2を売却して売却費全額を債務弁済にあてることを決め、RCCと協議に入り、98年3月30日に土地1が26億、土地2が7億の合計33億円で三井建設(以下、三井)に売却された。が、この売買に至る過程でRCCに問題行為があったわけだ。 まずRCCが認めた「不適切な回収」は、土地2の評価を当初17億円とし、26億円の土地1と合わせ計43億円で売ろうとしていることを明治・横浜に伝えていなかったことである。 いっぽう、本誌の取材でわかったRCCが公にしていない問題点とは、土地2を17億円とすると、国土利用計画法の勧告処分となる可能性が高いにもかかわらず、土地2の評価額の見直しをせず、国土法を通す策略をあれこれと練っていたことだ。 朝住の関係者が話す。 「RCCは『契約関与者間の信義の上から土地2の17億円という評価額も明治、横浜に伝えるべきだった』などときれいに釈明していますが、この額でいくと坪単価は土地1が約55万円に対して土地2が約380万円と異常な高値になる。後にこれを知った明治・横浜は土地2が17億などという額と知っていたらこの土地売買を承諾し、担保抹消同意書にハンコを押すわけがないと激怒したそうです。この案は結局、国土法を通らず"未遂"に終わりましたが、そんな法律を通らない案をRCCの担当者だった竹内隆夫弁護士らは、朝住の松本書造社長(当時。松本社長は98年4月28日に別件の詐欺罪で逮捕され懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けている)らとともにどうしたらパスできるかとあれこれ策略していたのです」
マスコミに出たらまずい契約
本誌は、RCC・朝住・三井3社が行ってきた話し合いの中身を克明に記録した「交渉記録」も入手している。その中に、この朝住関係者の証言を裏付けるこんなやりとりがある97年12月25日に行われた会議の一部だ(カッコ内は編集部注、中略部分は「・・・」で示した)。 朝住A氏 いちおうそれは昨日も言うたんですけどね、私も。だから「とてもそういう評価(土地2を17億円とする評価)を出せないんで、そういう契約は国土法違反です」と。 RCC竹内弁護士 (土地1・2)二つと見るからね。だからどうやろ、契約書を一つにして、別紙を付ける方法でやったら・・・:。 A氏 そこで(1と2の)単価が違いますよね。…その単価が違うというところを言われていますんでね・・・。 RCC調査役I氏 オモテの契約は43億で一本ですよと。・・・売買代金の分配はまた違うものをつくると。 竹内 どこへ出ましても、マスコミがどこで拾おうが、将来なんの問題もないような形にしておきたいというのが我々の考えでございまして・・・。 マスコミに出たらまずい契約とわかっていて策を練っているのだから、"謀議"といわれても仕方ない。また、RCCは明治・横浜に「伝えようとしなかった」という表現をしているが、むしろ、意図的に隠そうとしてい,たことは、98年1月の次の会話が物語っている。 朝住A氏 ・・・もうひとつ考えられるのは明治・横浜さんから間い合わせのある可能性もあると…。 RCC調査役U氏 それはたとえば明治・横浜さんについては・・・26億の価格である、それに相違ございませんと…お答えいただく。 国策会社として公明正大であるべきRCCが、このように、法をすり抜ける策を練り、土地の評価額を意図的に隠すという不適切な交渉を行っていたのだ。次にもう一点、RCCが「不適切」と認めたのは、土地上の構築物について、明治・横浜がもつ根抵当権の効力が及ぶことがわかっていながら、明治・横浜に知らせずにこの構築物の売買契約の話し合いを朝住・三井と行っていたこと。ここでいう構築物とは、ホテル建設途中で放置された7階部分まで組まれた鉄骨の骨組みを指す。RCC関係者が話す。 「要は土地2を17億でという案が国土法で蹴られたため、この構築物に目をつけたということ。RCCは『本来ならば、お知らせすべきでした』と苦しい表現をしています が、民法第370条の規定からこの構築物には低当権の効力が及びます。つまり、RCC・朝住・三井の3社は、この構築物の低当権者である明治・横浜に内緒でこれを売買しようとしていたわけです。売買がもし成立すれば民法に反する行為。明治と横浜が『これは詐欺的行為』と言うのももっともです」 また、別のRCC関係者はこう明かす。 「じつは明治は抵当権を外すにあたって、RCCと朝住に疑念を感じ、いくらで取り引きが行われるのか、確認の文書を求めたんです。売買契約締結日に明治に提出された文書には、中坊氏と松本社長の印鑑が押してあり、『33億円については、担保抹消に関する合意に基づき、1-1(土地1)26億円、1ー2(土地2)7億円とし、それぞれの低当権抹消等の費用とする』とあります。明治は民法370条にのっとって、この33億のなかに構築物も含まれると安心して担保をはずしたわけです。ところが、その陰で構築物の契約が明治抜きで画策されていた」構築物の売買代金については、RCCは「朝住の説明によれば10億」と話しRCCが.主導してつけた値段でないと主張する。 が、98年2月24日の交渉記録には、構築物10億を提案した松本社長にRCCの竹内弁護士が「さすが、社長」と答えており、RCC側も乗り気だったことがうかがえる。 また、RCCは構築物については土地売買成立前に話し合いをしていただけと主張している。ところが、この土地売買契約が締結された98年3月30日以降も構築物を10億円で売ろうとする動きがあったことはRCCは公にしていない。 保有税7億の回収にも疑惑が
本誌は構築物10億円の話し合いが具体的に進んでいたことを示す資料を入手した。 大阪府知事宛に松本社長と三井の社長名で98年4月20日に出された「土地売買等届出書」である。じつは3月2日にもこの土地の「土地売買等届出書」は提出されており、その構築物の金額欄には「0円」と記されていた。ところが、4月20日に出されたそれの金額欄には「10億円」と記載されているのだ。 しかも、4月20日は売買契約の締結後。これは、土地について契約を終えたのちに、構築物10億の新たな契約を結ぼうとしていたことを示すのではないか。 RCCの付和男常務は、 「(売り主の朝住と買い主の三井で)届け出は出し、受け付けはされたが、3月30日時点ですでに売買契約が終わっているので、新たに工作物(構築物のこと)については届出書はいりませんと行政当局(大阪府)に言われ、取り下げをしたはずです。(RCCは)単なる抵当権者にすぎないし、売り主か買い主が書いたとしか考えられない」と話すが、村氏は本誌が指摘するまでこの届出書の存在を知らなかった。どこまで徹底した事実調査が行われているのか、疑問が残るのだ。 さて、こうした不適切な回収の「被害者」となった明治・横浜はなんと答えるか。 「一般論ではありますが、どんな問題であれ解決にあたり不合理な妥協はすべきでないと考えています。なお、本件については、RCCによる正確な事実報告を待ったうえ、対応を検討したいと考えています」(明治生命広報グループ)「整理回収機構で内部調査されると聞いており、その結果を待ちたい。現在、本件に関する正確な情報開示を依頼している」(横浜銀行広報室)どちらも控えめだが、怒りのニュアンスは伝わってくる。 RCCと両社の話し合いはいまだに決着していないが、その背景にはさらにもうひとつ、RCCの疑惑があるのだ。この土地売買の33億の配分は、明治と横浜がそれぞれ9億、RCCが7億、1億が諸経費で、残り7億は堺市に払う特別土地保有税となっていた。 この土地は、もともと朝住が「ホテルを建設するなら保有税は免除する」という特約付きで大阪府から買ったものだ。しかし、ホテル建設ができなければ、堺市に購入時から売却までの間の税金を支払わなければならない。その保有税分が7億というわけだ。「ところがこの土地売買では保有税は結局猶予、つまりゼロになり、そっくりRCCが回収した。 RCCは『保有税はかかってもかからなくてもRCCの回収に充てるという了解を明治・横浜に得た』というのですが、明治・横浜は最近まで保有税が支払われていたと認識していたんです。明治・横浜は驚くとともに、保有税分7億円をRCCが丸儲けしたことに呆れている」(前出・RCC関係者)こうして見ると、この土地売買での問題回収の全貌は、まだ明らかになっていないといわざるを得ない。 RCCは「不適切な回収」のすべてを明らかにし、なぜそうした回収が行われたのか、納得のいく説明をすべきである。 (以上 週刊現代 2000年1月27日号より)
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