安田弁護士逮捕事件の背景  宮崎 学


 去年の12月6日に安田好弘弁護士が逮捕された。彼の法律事務所に知っている人がいるので連絡を受けてガサ入れに立ち会ったのだが、そのときは「まさか!?」という思いがした。
 
 というのも、安田弁護士というのは日本の弁護士会の良心であり、死刑廃止運動の中心的役割を果たしていて、この言葉は私はあまり好きではないのだが、人権派の弁護士の中でも数少ないホンモノの男なのである。
 
 またオウムの主任弁護士であり、あの麻原にでも人権があると、私に言わせれば虚構のようなことに命を賭けている、ガンコで融通のきかないほど間違ったことをしない奴なのである。

 オウムの主任弁護士というのは、弁護士会が選んで裁判所が選任したという、そういう手続きの上に成り立っている、いわば聖域みたいなところにいた人で、国家権力、警察権力からは最も遠いところにいたので、最初の思いが「まさか!?」ということだったのである。

 事務所に行ってみると、これが公安ではなく、警視庁の授査二課だった。家宅捜査そのものは何回も見ているし、私もやられたことがあるからよくわかるのだが、手続きとおりにやっていたにもかかわらず、その背景が実に読みづらい思いがした。

 安田弁護士の容疑というのは、旧住宅金融専門会社「日本住宅金融」と「住総」の大口融資先である不動産販売会社「スンーズコーボレーション東京リミテッド」が所有するビルの賃料をダミー会社に移して隠したとされる強制執行妨害容疑事件で、彼がそれを指示していたということだった。

 大半の人は、安田というのは住専の悪者の弁護士で、あの麻原の弁護をやっているのだからパクられても当然だ、っただろうが、日本で最もまともな弁護士の一人がパクられたのである。これは不良債権の処理という、極めて経済的で、そして、国家政策的なものが、日本の中にあった弁護士の存在そのもののシステムを壊し始めたということなのである。

 不良債権の処理というのは、いままであった強制執行法とか、競売にかかる法律とか、それに基づいてやられていたのだが、それがこの間、何回かの法改正があって、回収する側に極めて有利な法律になった。不良債橿の回収をなりふり構わず進めていくためには、いままであったようなシステムではできない。それができないと金融不安が起こるということで、従来あった日本の弁護士のシステムを破壊したとしてもやむをえないという諭理なわけだ。

 ところが、ことは民事の債権の問題のはずである。金を貸している人と借りている人の間題なのであって、金を貸している人は何とか回収しようとし、金を借りている人は何とか逃げようとする一このせめぎ合いを法廷という場でやるわけで、これは民事の裁判なわけだ。だから当然として、取り立てる方だけに正義があるとは限らない。借りた方にだって言い分があることが非常に多いのである。

 借りた側の自已責任ということが、いまはまかり通っているが、その延長線上に住管機構(住宅金融債権管理機構)というのがあるのである。だがこれができた背景に何があったかというと、6千億の税金を不良債橿の処理のために使うというので、国民の反発が強くあったのである。

 そこでこういう機関を作ってやれば大丈夫ですという、アリバイのために作られた機関なのである。その後、これを突破口にして何10兆円という税金がさらに流れていったわけだが、今回、安田弁護士を訴えた住管機構というのは、国の失政をおおいかくす無花果の葉といえる。国を挙げて、いまの経済政策の失敗をごまかそうとして住管機構を作ったのだが、経済的な不況からくる日本のエスタブリッシュメントの焦りというものが、安田弁護士の逮捕の背景なのだ。

これが一番めの問題として、次に二番めの問題として、住管機構そのものは、ほとんど全部が弁護士であるということである。社長、副社長、常務を含めて。弁護士というのはそもそも誰かに雇われているのだが、今回、彼らは誰に雇われたかというと、お上なわけだ。いや、国民に雇われていると言い張るだろうが、実は違っている。というのも、住管機構はいままで政治家と役人は、誰一人として告発していない。つまり本当のクライアントには楯突けないということ、なのだ。だから私は中坊不公平と言うのだが、しかし弁護士という職業の成り立ちから見れば、これは当たり前といえる。
そこでやったことは何かというと、スケープゴート的に、安田弁護士のように一生懸命やっている奴を、オウムの問題と重ね合わせて悪いイメージを作っておいて、それを叩くという形をとった。実は安田弁護士がオウムの弁護をするにあたって「面倒くさい事件だけど、あんたしかいないからやってくれませんか」と、土下座して頼みこんだ奴がいるのだ。

 それが安田弁護士を告発した住管の副社長の黒田純吉なのである。彼は刑事弁護に関しては相当の腕利きなのだから、本来自分でやればいいはずなのに、オウムの弁護をすれば世諭の袋叩きにあうということで、仲間に頼みこんで、その仲間を訴えるという手段をとった。

 結局、住管というのは、官僚と政治家を守る機構としてあるわけで、中坊公平のような一見清貧のイメージの人がシャッポにいれば、国民も安心してお金を流しこむという、現在の政府のやり方を容認しやすくなるわけだ。

 裁判のシステムどいうのは、検察側は「こいつはいかに悪いか」ということを言い、弁護側は「この人はいかにやってないか」ということを言って、両方とも争って成立するシステムなのであって、一方の側が一方の側の内部にまで入って、そういう弁護をすること事態が気にくわないと言い始めたら、システムそのものが崩壊してしまう。

 今回の住専処理、及び不良償権の処理に絡んで、弁護をしてはいけないということになる。これによって一体何が起きるかというと、弁護士たちがビビリ始めているのだ。今度は「俺もパクられるんじゃないか」と。こうなると社会的批判を食らうような、たとえば麻原の弁護などはやらない方がいい、ということになってしまう。つまり早く死刑判決を出して吊しちゃえばいいんだと、それに協力する弁護士がいい弁護士だということなってしまう。これは日本の司法制度の何よりの崩壊なのである。

 安田弁護士の逮捕というのは、とても小さな事件のように思えるが、我々アウトローにとっては非常に考えなくてはならない事件だ。何より社会的指弾を受けるような存在の弁護をやってくれる人が少なくなってしまう。冤罪事件も多くなってくる可能性が大いにある。刑事弁護において芸術的ですらあった安固弁護士というのは、権力にとって目の上のたんこぶであったろう。それを取り除いてしまうという、明らかに大きな権力の意思を、そこに感じてしまうのだ。

 住管機構そのものが、政治的にいえば、何よりうさんくさいところといえる。安田を窮地に追いやった人たちがそこにいて、自分たちは安全なところに身をおいて、住管機構から月々253百万の給料をもらってハる。自分たちが本来やらなくてはならなかったオウムの弁護をしないで、頼まれて侠気でやった安田が袋叩きにあったら、その尻馬にのって訴えてしまった。これはなによりも人道にもとる行為であると、私は思うのだ。


ついに牙をむいた

「中坊公平型」ファシズム

1.2 安田氏を麻原と同じ留置房に 3 .

安田弁護士からのメッセージと

うちの組員の報告 98/12/16

【電脳キツネ目組】組員の

緊急集会報告 98/12/16

安田弁護士不当逮捕抗議集会の呼びかけ

安田好弘弁護士に対する逮捕に抗議し、
12・16即時釈放を求める緊急集会に参加を
組織犯罪対策法に反対する全国弁護士ネット事務局
(事務局弁護士 海渡雄一 鬼束忠則

場所は下↓

http://www.nichibenren.or.jp/michi/chizu.htm

安田弁護士救援大集会開催の提案 

 98/12/9 港合同法律事務所 

読者から

投稿 「司法ファッショですな」 12/07

港合同法律事務所抗議声明 全文 12/07

1/23 安田弁護士救援集会報告 1/24

中坊「黄門」と法曹大政翼賛会 1/11 宮崎学

ver2 読者からのメール 1/12