「朝鮮系信組」への攻撃は逆効果 である

(アサヒ芸能9/11日号)

キツネ目事件調書

 万景峰号が来航した。この前後から、在日朝鮮人開運の企業や施設、個人への攻撃が激しくなっている。何者かが朝鮮系信組に銃弾を撃ち込み、発火物を仕掛けたり、朝鮮人学校には嫌がらせの電話が殺到。女子学生のチマ・チョゴリをひっぱったり、背後から突き飛ばす事件まで起きる始末だ。

 国家的謀略によって拉致を行った北朝鮮を「悪」と見ることには俺も同感である。だが、こうした一連の行動に何の効果 があるか。金正日体制崩壊の一助?何のプレッシャーにもならん。

 俺は日本のだれよりも早く、朝鮮労働党の解体を主張してきたと自負している。それは1969年に親友の朝鮮大学生が行方不明(俺は拉致だと考えている)になったことで、同党がいかにとんでもない組織か、身をもって知ったからだ。

  労働党崩壊へのシミュレーションも数々考察した。たどりついた結論は現在の韓国と同様、太陽政策であった。

例えば89年のソ連解体に関しても^武力によって壊れたわけではない。むしろ逆で、平和な世界をいかにして作るかという議論の過程で自壊していくものなのである。東ドイツやルーマニアの例をあげるまでもない。すべては歴史が実証してくれている。北の脅威と隣接する韓国はそれを早くから知っていたのだ。

 それゆえ、前述の日本国内での反"北"行動は、金正日体制を延命させることにもなりかねないと俺は見る。「世界はわれわれを不当に敵視している。だからこそ一致団結して戦うべし」と、体制強化の材料、いわゆる政治的プロパガンダに使われるのがオチだ。韓国で開催されたユニバーシアードでも、その前後に南北の衝突があったっ韓国内部の保守派折過剰反応を示せば、これを許されさる圧力として、北朝鮮は国内の結束を促した。

 北朝鮮という国は、最初から韓国がどんな反応をするかを読んだうえで行動している。そのことを理解しておく必要がある。

 

 しかし、俺が一連の嫌がらせを腹立たしく思う最大の理由は、その大半が在日朝鮮人に向けられている点にある。彼らが日本に来た理由を考えてみてほしい。それはとどのつまり、日本による36年間の植民地支配の結果 ではないか。強制的に連れてこられた者もいる。出稼ぎ的にみずから来た者もいる(宗主国のほうが金が稼げると判断するのは当たり前だ)。

 拉致に関与した者は別だが、労働党の罪過に対して、在日朝鮮人が嫌がらせを受けねぱならないいわれはなかろう。60年代前半の帰国事業以降、彼らの多くは日本で稼いだ金を北朝鮮に巻き上げられてきた。送金しなければ、北にいる家族・親族が悲惨な目にあう。在日朝鮮人とは、そんな二重、三重の被害者でもあるのだ。

 さらに思想的な観点でいつでも再考すべき部分がある。右翼を自称するかのような犯行声明を出している点だ。23年の関東大震災のとき、朝鮮人が暴動を企てているとの流言飛語がもとで、朝鮮人大虐殺が一部で起こった。このとき、虐殺から朝鮮人を守ったのは、当時の左翼や社会運動家ではない。内田良平率いる黒龍会という右翼だったのだ(詳しくは拙著「不逞者」参照)。「アジア人は兄弟である」というのが、彼らの理屈であった。この伝統を引き継ぐものがあってもいいだろう。

   

また朝鮮労働党も、嫌がらせを利用するどころか、一説によると、在日朝鮮人をすでに見捨てたとのフシもある。むしろ彼らが攻撃されることを望んでいる、と考えるのも決して不自然ではない。

 労働党が最も恐れているも のとは何か。それは在日朝鮮人が"自主的に"北から離れていくことだが、実はこれも急速に進んでいるようでもある。日本からの送金も目に見えて減っているという。某パチンコ業者によれば、不景気を理由にして送金を減らしている、非常に楽だ、と実際、漏らしていた。

  また、朝鮮総連の元活動家は、以前、金正男が日本に現れたのを見たとき、自分たちが間違っていたことに気づいた、と俺に言った。金親子は民族のために骨身を削って働いていると思っていたのだが、ただのブランド好きとわかったのがショックだったというのだ。その元活動家は総連をやめたぱかりか、自分の息子に韓国籍を取らせた。こ れまでには絶対になかったことである。日本としては、こうした動きを加速させる方法を模索すべきだろう。

   

 では、具体的に、日本は何をすべきか。できるだけ"情報"を送る二とである。それも、労働党から自然に離れていく要因となるものを。

 東欧における社会主義国崩壊の際も、資本主義国側の情報が流入したことが大きく影響している。独裁者の実態が明らかになり、マインドコントロールが解けたのである。今の状況で、北朝鮮にメディアを使った情報を持ち込むのはきわめて難しい。

だが、方法はある。侮れないのが国境付近における物々交損的貿易だ。ここでは、品物を新聞紙で包んで手渡すのが通 例である。事実、東欧社会主義国の崩壊直前も、多くの国民が包み紙として入ってきた新聞を奪い合って読んでいたという。中朝間には民間レベルの貿易は少なくない。そんな国境貿易を地道に応援することで、他国の豊かさと自分たちの悲惨な状況を自覚させていくのだ。

 

 

 いずれにせよ、今、必要なのは熱狂による圧力ではなく静観である。同情論的に盛り上がる拉致問題、北への強硬態度の支持。そして一連の在日朝鮮人への攻撃。蔓延する異常な空気は、それで利益を得る人間がいるからである。そこに気づくべきだ。いわゆる日本版ネオコンである。圧力による崩壊を主張する彼らは、本気で北朝鮮を壊す気はない。北朝鮮がいてくれたほうがみずからの勢力を拡大するうえで有効に作用するからである。

 こうしたマヤカシに気づく冷静さこそ、今、求められることなのだ。ほうっておけば、間違いなく北は崩壊する。最後っ屁的にテポドンを撃ってくる、と危惧する声もあるだろうが、その可能性はまずない。旧ソ連は北朝鮮と比べものにならないほどの武器を持っていた。核保有数、ミサイル技術は当時、アメリカ以上だったともいわれるが、何も起こらなかったではないか。それが 何よりの証拠である。歴史から学ぶとは、そういうことだ。

 

 

今週のテーマ

在日朝鮮系信組への攻撃相次ぐ "8月23日、岡山市の在日朝鮮系の信用組合に銃弾が撃ち込まれた。7月30日には新潟市のハナ信用組合で発火物が見つかり、周辺住民も避難した。万景峰号入港にまつわる反対行動との犯行声明が、後日、報道機関に届いた。

 

 

 


 

 

 

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