イラク戦争が長期化の様相を見せ始めた。まあ、どういう形であれ確実にアメリカが勝つやろ。この時期になっていまさら、勝敗の話などしても何もならん。そこで今回は、メディアとの関連からこの戦争を考えてみたい。

最大の特徴は非常に情報量が多い戦争ということだ。1991年の湾岸戦争では秘匿性が優先され、配信されたのは一部の空爆映像にすぎなかった。それに対し今回は、米英軍への従軍記者も急増。空爆はおろか最前線での映像、さらにはバグダッド市内の様子などは常に生中継態勢となっているほどだ。 この政策変更は湾岸戦争の反省にある。当時、われわれはピンポイント爆撃の命中シーンばかりを見せられていた。だが、実際の命中率は10%にも満たないことが、のちに明らかになり、担造が発覚。油まみれの海鳥の映像でのヤラセもその象徴であった。これらによって、アメリカは世界から批判を受けた。過度な情報規制と作為的報道はかえって損と踏んだのだろう。

さらに「衝撃と恐怖」という作戦名。攻撃の様子をイラク国内にも徹底して配信することで、自壊を促すもくろみだ。抗争時のヤクザが敵対組織の事務所に発砲して「衝撃」を味わわせたあと、その組長の愛人宅へ脅迫電話をかけて「恐怖」を植え付ける。まあ、日本のアウトローにとっては古典的な方法や。
当然、戦地の情報すべてがフリーパスで届いているわけではない。そもそも従軍を許されているのはアメリカが認めたメディアに限られている。不利な情報を流す危険のあるメディアは、最初から除外されているのだ。
積極的な情報のディスクローズにも見えるが、結局は管理状態、情搬操作にすぎない。これにはベトナム戦争での教訓も考えられる。従軍させたジャーナリストたちが無制限に戦争の凄惨さを伝えれば、アメリカ本土が反戦運動に揺れるのは必至。ベトナムからの米軍撤退には反戦連動が大きな影響を与えていた。この轍を踏めば、間違いなくブッシュ政権は吹き飛ぶ。

恐らくこのメディア戦略にはPR企業・広告代理店が介入している。92年のボスニア紛争でアメリカの広告代理店がボスニア側に加担し、セルビアを悪とする国際世論を味方につけた、という例があった。積極利用策は、これと同じ構図と見ていい。
アメリカの政治家は元来、メディアとうまくつきあってきた。特に9・11テロ以降、その傾向は顕著だ。その直後、ブッシュの支持率が90%を超えたのも、メディアが事件の悲惨さ目結果
だけを繰り返し、なぜテロの標的になったのか=原因についてはほとんど触れずにいた偏向報道が理由である。この点でも同じ効果
を狙っている。ブッシュの選択は正しく、米兵はかくも勇敢に戦っている、ということをアピールすることで、政権の支持率をさらに強固なものとし、次の選挙でも勝つーー見え見えの絵やで。

戦争への出費でアメリカ経済は相当の痛手を被るだろうが、メディア戦略をプロモートした広告代理店は、武器商人よリ多額の金を確実に手にしているはずや。
しかし、このもくろみは必ずしも期待どおりの効果を上げていない。
誤算の第一はイラク軍の予想以上の抵抗にある。空爆で圧倒的なカの差を見せつければ萎縮すると思っていたようだが、人間、鉄砲持って殺すぞと言われれば抵抗するのが当たり前やで。そもそも今回の戦争自体、「アメリカは大量
破壊兵器を持ってもいいが、フセインはいかんしという無理無理の根拠に姶まっている。
こうしたアホな発想はまさにネオコン(新保守主義)的と言える。彼 らに兵役回避者が多いことも、戦争へのリアリティ欠如を生んでいる原因の1つだ(テキサス州兵になることでベトナム行きから逃げたブッシュが典型例や)。戦争を知らんくせに戦争を好む。どうしても戦争への認識がバーチャルになってしまうのだ。
また、さらなる失策は捕虜問題だ。イラク側が捕虜にした米兵の映像をテレビで流したことに対し、ラムズフェルド国防長官は「ジュネーブ協定違反だ」と騒いだ。これこそ笑止である。開戦自体が国際法や国連憲章に違反しているにもかかわらず、何をいまさら、である。相手を非難するなら、まずは自分らが戦争やめて国に帰るのがスジやる。

しかし、何より最大の誤算かつ脅威は、アルジャシーラの存在である。同居はアラブ資本によるカタールの放送局だが、技術陣にはイギリス国営放送BBCのノウハウを持つ者が入っている。きっちりした仕事はそれが理由だ。今回の報道で特に目を引いたのは、イラク南部の港湾都市での攻防報道である。
米軍はこの地をすでに制圧、戦闘は終了したと発表したが、その直後、いまだイラク軍の抵抗は続いていると伝え、報道を覆した。米軍情報のずさんさを露呈したのである。米兵捕虜の映像をいち早く流したことも大きい(後日、遺体も公開)。アメリカは即座に抗議したが、敏感な反応は間違いなく焦りの表れや。
その後、アルジャシーラの英語版HPがハッカーの妨害を受けたり、アメリカでの取材制限がかかったことも同様。メディア戦略の絵は、このー局によってつぶされる、と言っても過言ではない。ただ、俺に言わせれば、広告代理店の書いた筋立ての通
りにコトが運ぶと信じていることが甘い。
もっと言えば、戦争を、それを仕掛けた者の支持率向上につなぐ「イベントしとしてプロモートする、という発想がむちゃくちゃや。こんなゆがんだ筋書きが成功するはずがなかろう。そんなメディアヘの過剰な意識は、結果
として戦争の形を変えてしまった。管理下にあるとはいえ、湾岸戦争に比べれば戦地での情報は流れやすい。反戦運動を避けるため
には、自国兵の戦死を最小限、に食い止めなければならない。
兵器のハイテク化には白兵戦の回避と早急な決着で、兵士の安全を確保するためという側面
もあった。しかし、それは敵国への残虐な被害状況と表裏一体。一瞬にして何千もの戦死者を生む、大規模な攻撃が今や主流である。その直接原因は、戦時のメディア活用を重視したアメリカにあるのだ。すべては完全な失策。開戦前から起こった反米デモの流れは世界中に浸透し、アメリカの凋落と孤立をもたらす。
欧州との亀裂ももはや修理不可能。取り返しのつかない大チョンボや。