「ステンレスの歯を持つ男」 坂井隆憲議員逮捕
抜きすぎ「伝家の宝刀」 背後にあるものはなんだ?
自民党所属だった坂井代議士が政治資金規正法違反で東京地検特捜部にバクられた。職業訓練会社「日本マンパワー」の会長などから受け取った約1億2000万円を届け出ず裏金として処理していたというのが直接容疑である。
俺自身、坂井容疑者との面識はないが、彼を食ったというか、彼に食われた大阪のあ口る抵当証券会社の関係者とつきあいがあり彼の情報は以前から聞いていた。むろん、すべてはクロい話である。
坂井容疑者は、旧大蔵省筋に強い影響力がある、とのフレコミで数々の所業を重ねてきたらしい(まあ、実際は言うほどのチカラはなかったようやがな)。先の抵当証券会社の例で言えば、証券発行には財務局の許認可が必要となる。この際、担当者に口を利いて条件を甘くさせたり、発行量を多くさせるなどして、その見返りに金銭を要求。いわば典型的なパターンや。
また彼は、バブル崩壊以降に頭角を現した。その背景には、くだんの人材派遣会社などとの太いパイプがあったらしい。バブル後は、人件費削減のために派遣社員を充てるアウトソーシングが多くの企業の潮流となってきた。その結果、人材派遣会社は一種の花形産業になり、人材さえそこそこ確保できれば、それなりに利益を上げることができていたのだ。
しかし、人材派遣は新しいビジネスで、税務処理などの面で不確かな部分が少なくはなかった。例えば、派遣した際のピンハネ部分は経費か利益か、などである。そこに坂井容疑者が介入することで経費として認めさせて、見返りを要求したというのが今回の事件のカラクリであろう。彼は国税で調査官の経験もあるので、当時のルートから圧力をかけていたと思われる。
さらに、銀行の破綻に伴って新たな融資先を探している会社に金融機開を紹介し、その手数料を取っていた、という説もあった。坂井容疑者に金銭を支払っていた連中によれば、彼はどんな無理なことでも金さえ払えばやってくれるというのがもっぱらの評判だったとか。どんなものにでも食らいつくことができたことから「ステンレスの歯を持つ男」との異名まで取っていたらしい。
しかも、今の段階で表ざたになっているのは裏献金の要求だけだが、俺がつかんだ情報では、自分が影響力を行使してきた人材派遣会社から知り合いの政治家の事務所などに、無償で人を派遣させる占いう手も使っていたという話もある。金という実弾を使わずして、有力議員との関係を深め、政界でのみずからの地位を高めてきたのだろう。この点においては、代議士が公共工事をエサに建設業者から金銭をかすめ取り、それを自身が所属する政界の派閥のリーダーに献上する、という方法とは明らかに異なる。
しかし、表面的に新味はあるものの、たかりの構造自体は先駆者・田中角栄の時代と何ら変わらんし、むしろセコくなっていることは否めんな。検察の家宅捜索直前に証拠書類を燃やすという原始的な方法で証拠隠滅を謀ったり、実行部隊の責任者である秘書との連絡にも証拠が残るメールを使っていた。やることが実にずさんや。そんな坂井容疑者を補完していたのが、一緒にパクられたミニスカ秘書こと、塩野谷晶容疑者である。彼女自身、選挙出馬経験があり、単なる秘書の仕事を越えて、政策や金集めにまでコミットしていたという噂もあった。彼もそれを利用していたつもりだったろうが結果的には裏目に出たな。

ところで、この事件でもうーつ考えねばならないのは、国会議員の逮捕許諾諌求に関する問題である。国会議員には不逮捕特権があり、逮捕許諾請求は本来、特異なケースに隈られる。しかし、それが正しく機能しているかどうかは、はなはだ疑問である。逮捕許諾請求は昨年の鈴木宗男被告以来なのだが、今回の事件と比較してその点を考えてみたい。
まずは金額。坂井容疑者の1億2000万円に対し、宗男被告は500万円、20分のl以下だ。億にも届かないチョロマカシが、政治家の汚職において特異なケースなのか、これは大きな疑問や。許諾請求の根拠も、証拠隠滅の可能性を検察側は主張しているが、はたしてこれも成立しうる話なのか。仮にそれが認められるなら、宗男被告のときはどうだったか?連日マスコミにマークされている中で何ができよう。宗男被告の逮捕はかなり無理筋だったと違うか。むろん、彼がやったことは違法であるし、擁護する気もさらさらない。だが、国会に許諾請求までして逮捕するほどの事件だったとはとうてい思えん。
そもそも許諾請求というのはある種、検察が持っている伝家の宝刀である。それをこうも頻繁に抜いていては威力が薄れてしまう。さらに言えば、これほど安易に許諾請求がなされ、それが認められていたのでは、検察が政治の、ひいては日本の支配者になる危険性も考えられる。また一方で、東京地検特捜部が動くということは政治的
意図があるのが通例だ。宗男被告のときは、検察の調査活動費問題に対する国民の批判をかわすのが目的だったのは明らか。
では、坂井容疑者に対して特捜が動いた真意とはー残念ながら、現時点ではわからん。普通に考えれば、小泉政権を援護することで自分たちの側に有利な政策の見返りをもくろむ、というのが検察の基本姿勢である。それが自民党の議員、それも繕理直系派閥の者に対しての逮捕許諾とは、まさに逆行や。この事件は、坂井容疑者逮捕だけにとどまらず、政界を揺るがす事件に発展する可能性も少なくはない、と俺は見る。ヘタをすれば本丸、小泉にまで何かしらの影響が及ぶ。そんな展開も視野に入れつつ、今後も注意深く見ていく必要はあるやろな。
ところで、坂井容疑者が初当選したのは90年。ちなみにこの年、先週当欄で触れたリクルート事件が発生している。彼はこの事件が政界に波及する状況を、政治家は清くなければいけない、と糾弾しつつ当選していたという。それがこの体たらく。いいかげんなもんやで。
世界中がキナ臭い今、こんなクダらん話で騒いとる場合やないが、どんなに不景気な時代でもきっちり儲けのシステムを確保する。政治家のいぎたない根性だけはみならうべきかもしれんなあ。