自治労裏金疑惑の裏にあるもの

 戦後労働運動のひとつの終焉からみえるこの国のダメさ加減

 

 

自民党亀井おろしへの布石?

 

 自治労(全日本自治団体労働組合)が裏金疑惑で大揺れに揺れている。

ことの成り行きは、要するに、自治労には内部的な利権の対立があり、利権から漏れた側がそれを恨んで内部告発。告発された側がヤクザを便って事件が表ざたになるのを押さえ込もうとしたため、さらに事態がエスカレート。そこに横領や脱税などの違法行為があることも明るみに出たため、権力が動いた、ということだろう。事件としては日本全国で日常的に行われているたぐいの話だ。

 ではなぜ、この事件を取り上げるのかと言えば、その理由は2つある。第一は、事件の中で、現在の労働組合の抱える構造的問題のすべてが露呈しているからだ。若い読者にはピンとこないだろうが、かつて自治労といえば、国労、日教組と並び官公労の中でも絶対的な存在だった。社会的発言力も強く、社会党時代に総理大臣になった村山富市氏はじめ、多くの国会議員も輩出している。今回の事件の中心人物も、あのころの指導者で、古い時代の体質に、どっぷりつかった連中である。

 ところが時代は大きく変わった。今では組合費を払うのが嫌だ、という人が大勢現れるなど、労組離れが急速に進んでいる。そんな中において彼らはシーラカンス的存在だったに違いない。しかも、自身の利権を守ることに関してだけはたけていたというのだから、当然、内部からは彼らに対する批判が出る。そこで、現執行部が自浄努力として古い勢力を切り捨てに出たのが今回の事件。つまりは世代交代に伴うドブ掃除だな。

 まあ、〃自治労百万人"と言われ、権力の介入を1度も許さなかった聖域に、いとも簡単に捜査のメスが入ったのを見るかぎり、戦後の日本の労働組合の歴史もある意味で終焉を迎えたと言わざるをえないのだろう。一昔前なら「不法な弾圧だ」と対抗したはずだが、それがまったくないのが、すべてを物語っている。

組合員に対する求心力も今回の事件で急激に低下するのは避けられまい。

 しかし、それはみずからまいた種でもある。冷戦構造が終結し、世界全体がダイナミックに変動する中、労働組合は、時代に適応する努力を怠ったからだ。

自治労に限らず、これからの労働組合は、単なる労使交渉にとどまらず、環境問題や人権問題など今まで以上に社会性を前面 に打ち出すしか生き残る道はない。

昔のように会社と対立関係を維持することに組合の存在価値を見いだす時代は終わったというわけだ。 ただ、正直に言えば、どんなにあがいてもムダやと思っている。

俺から見れば、日本という国がすでに終わっているからである。

 会社と持ちつもたれつの関係でなれあってきた労働組合は、なれあいのまま日本経済とともに終わりを迎えるべきと違うか。末期ガンの人にいくら抗ガン剤を打っても始まらん。今の労組はそこまで病んでいる。だったら、ホスピスで尊厳死を迎えたほうが、かつての栄光を傷つけずに済むような気がするぞ。

 

 自民&民主党の・抵抗勢力斬り  

 

  そして第2の理由。

 今度の自治労の事件には、こうした労働組合内部の腐敗問題に加えて、政治的な駆け引きがある、と俺は見ているのだ。なぜ、この時期に自治労を叩いたのか。ナゾを解くカギは、先日、特定郵便局を舞台にした選挙違反で参院議員を辞職した自民党の高祖憲治の事件だ。 高祖の事件では当局は何を切ったかと言えば、自民党の支持基盤のーつである特定郵便局である。

そして、今度は返す刀で自治労という、民主党の重要な支持基盤に刃を向けようとしている。その意味においては、日本の司法権力、とりわけ検察は実にバランス感覚があると言えるだろう。

 しかも、特定郵便局と自治労には1つの共通 点がある。両者とも、小泉が進めようとしている構造改革にとっての抵抗勢力なのだ。つまり、特定郵便局は郵政事業の民営化に反対しているし、自治労は公務員の削減に真っ向から反対。裏を返せば、今回の一連の事件は、小泉改革の推進を狙ったものである。小泉も見かけによらず手の込んだワザを使うものだ。

 事件の取材をしている東京地検担当記者によれば、「東京地検特捜部はかなりカを入れている。最終的には自治労を基盤にしている民主党系国会議員の逮捕までたどりつく事件になるだろう」とのこと。恐らく年内には現職国会議員の逮捕劇が起こる。場合によっては民主党版KSD事件にまで発展する可能性も否定できないが、東京地検特捜部が動く以上、少なくとも現職議員を逮捕しないかぎり、収まりがつかないのは確かだ。

 それにしても、検察はなぜ、この時期に小泉のために、これだけ働かねばならないのか。その背景には、自民党が進めようとしている司法改革がある。今回の司法改革をひと言で言えば、司法にかかわる人員を増やそうというものなのだが、どうしたわけか、その対象に検察官が含まれていない。

 検察を増員対象から外したのは、自民党の亀井静香の意向が大きい。亀井と言えばバリバリの警察族議員だけに、検察とは、いわば敵対関係。加えて、経済対策から雇用問題まであらゆる面 で、反小泉の急先鋒でもある。

 検察としては、小泉を助けることで、亀井の影響力をそぎ落とし、最終的には司法改革における自分たちの利権を守るサバイバル戦争なのだ。し訟し、これば検察が小泉との良好な関係を保つ意味での表面 的な理由で、裏にはもうーつ大きな狙いがあると俺は見ている。ズバリ言えば、検察はどうしても亀井をあげたいのではないか。イトマン事件、若築建設事件など許水中が絡む事件に必ずと言っていいほど名前があがりながら、逮捕できない亀井をおとしたいのだ。

 しかし、それには政界全体が「亀井逮捕やむなし」と認めることが不可欠。だから、検察はせっせと小泉は貸しを作っている、と。 自治労騒動は、布石の1つ、と見るのは、あまりにも深読みが過ぎるだろうか?

今週のテーマ

自治労裏金疑感自治労(全日本自治体労働組合)関連の情報処理会社UBC元専務らによる業務上横領のほか、簿外口座の残高約8億円や東京労働金庫からの機関決定を経ない拠億円余り,の借り入れなど、自治労本体による裏金工作が発覚。

  (アサヒ芸能 11月8日号 キツネ目事件調書より )