アフガンはカンボジアの二の舞になる

テロ対策特別法案のキナ臭さ 2

宮崎学である。

 アフガンの戦況がアメリカの予想を次々と裏切っているというのに、そのアメリカの言いなりになろうという阿呆な法律が通ってしまった。

 別にわしが解説せんでも、ひょっとしてアメリカを、そしてコイズミを信用していた人らも、なんか変な気がしてるのではないかな。「テロ」とか「戦争」とか好き勝手にいいくるめてアメリカがアフガンに攻撃を掛けているが、さすがに「ひょっとして、アメリカのいう通りではないのではないか?」という疑問があちこちから吹き出す寸前である。

 そのころになって粗雑な「なんでもかまへん自衛隊派兵や」法みたいなんを通してしもた。

 以下は、2週間ほど前に、アサヒ芸能用に書いたものだが、基本的にはなーんもかわっとらんので掲載しておこう。

 注意深い読者は気がついているとおもうが、アメリカのアフガン攻撃はだいたい予想どおり泥沼に入りつつある。

 そらまあカウボーイの正義が泥沼に入るのは勝手やといいたいが、泥沼に一緒にひきづりこまれるのは日本でもあり、すなわちひいては諸君らでもある、ということはわすれんほうがええ。ますますノーミソをとぎすまして、お調子者の正体を暴露してきたコイズミあたりの口車に乗ってうっかりしとったらえらいめにあうでえ。

 ん?インドおきでボートでタンカーに特攻?これはマラッカ海峡でも機雷よりやさしいな。今回の法律は、むろんあのあたりに「テロ」があれば「日本軍」が出ていくことを可能にしたんや、ということをおぼえておきや。

             あはは。では、さらばじゃ

 

 

 アフガンはカンボジアの二の舞になる

 

 テロ対策特別措置法案が与党3党の賛成多数で衆議院本会議を通過。参議院本会議を経て早ければ26日にも成立する見通 しだ。また、今週もその話題か、と恩うかもしれんが、今回の同時多発テロとその後の米国の報復攻撃に関しては、多くの国民が誤った認識をしすぎている。ただ、それもしかたがない。そうなるようにしむける連中が大勢いるからだ。

 まず、第ーの誤解は、アメリカが日本の自衛隊の出動を求めているという話だ。はっきり言ってそんなもの、だれも期待などしていないだろうに。俺は(自衛隊が)地上戦に参加する可能性はきわめて低いと思っているが、そうなった場合、英米部隊は、自衛隊など足手まといになるだけだから来るな、とすら思っているほずだ。今は武器や燃料など輸送する物資が多いから自衛隊の飛行機や船も使いみちがあるが、必要なのはそこまで。要するにヤクザで言えば運転手程度で抗争には使えないというのが世界的な評価である。

 小泉など日本政府は勝手に盛り上がっとるが、アメリカが日本に対して本当に求めているのはカネだけや。湾岸戦争のときも日本に対していろいろと批判が出たが、あれも日本が軍を出さないからではなくて、〃カネを小出しすること。に対する批判なのだ。どうせ出すんならl度に出さんかい、というわけだ。

今回もそれと同様。自衛隊をいくら出したからといって、日本の国際的地位 が上がることなどない。むしろ、話の通じんヤツや、ということになるだけだろう。

 第2の誤解。世界の多くの国がアメリカの言う「自由主義社会をテロから守る」という理屈に賛同している、と思っているヤツは多いだろうが、これも大間違いである。

 空爆の開始直後に俺が知り合いの中国系アウトローにこの件に関してどう思うか、と聞いてみたところ、ヤツは開口一番こう言った。「アメリカはまたパールハーバー。をやったな。本当にひどい国だ」事前にテロを察知していたにもかかわらず、対タリバンに向けて国内的士気を統一するために、あえてそれを防がなかった、というニュアンスであろう。

 結局のところ、彼らにとってのアメリカとは、文化もないし知性もない。ただパワーだけがある国。しかも、ちょっとしたことですぐキレる、といったものだ。もともと中国系アウトローは清朝末期の内戦時に難民を束ねた連中がその起源で、その後も数度の戦争に対して表舞台でかかわってきた。それだけに戦争には敏感だし、常に冷めた目を持っている。

今回の報復攻撃に対する彼らの見方は2つ。

この戦争はカネにはならない、もはや戦争特需が起こる経済状況ではない、ということ。

 そして、アメリカはアフガンを破壊することはできても、イスラム原理主義との関係はますます泥沼化し、アメリカの影響力にかげりが出ることは必至。この影響によって中国の発言力が高まり、台湾を飲み込もうとする気勢が再燃しかねない、と見ているようだ。

 また、彼らに言わせると、アメリカという国は正義を装うことにだけは非常にたけているという。報復についても本当に必要なのかが大きな疑問だ、と彼らは語る。

タリバンを壊滅させ、ピンラディンを捕まえるだけが目的なら、戦争は不要。国境を封鎖して他国からの援助が届かないようにすれぱ、北部同盟とタリバンの内戦が始まり、いずれタリバンは自滅したに違いない。

 そこで再考したいのが、「アメリカが戦争に突入した理由は何か」、ということ。

 1つはカスピ海から得られる天然ガス利権。ブッシュの最大支持基盤であるテキサスの石油資本がそこに目をつけて、たきつけているのだろう。

 ただ、開戦の最大の背景にあるのは、ブッシュ自身の支持基盤の弱さだ。戦争を利用してアメリカ国民が団結しているように見せかけることでみずからの支持率を高めたい、というのが本心だろう。

 テロが発生した時点で、「あんな事件も防げないブッシュは大統領失格だ」という批判が出てもおかしくはない。それを防ぐためにタリバンを徹底的に悪者にして、最終的には爆弾を撃ち込む。つまり、国民の目を外に向けることで、自分への批判をかわそうとしているのである。

 その点で言えば、小泉も同類。失政をすべてテロに責任転嫁し、ブッシュにすり寄ることで長期政権をもくろんでいるわけだからな。おかげで国民は、テロの報復におびえて生活せんといかんのだから、たまったもんじゃない。

  そして、第3の誤解。それはタリバンさえつぶせぱアフガンに平和が訪れ、西側世界にも平穏が約束される、というヤツだ。俺は断言するが、そんなこと、絶対にないて。

 今のまま進めば、恐らくタリバン後のアフガンは北部同盟を中心にした政権が樹立されるのだろうが、それが一般 に思われているほど立派なものになるとは考えにくいのだ。そもそも以前のアフガンは北部同盟が支配していたわけで、それがムチャクチャだったからタリバンが台頭しだということを忘れてないか。

 例えば、タリバンは女性が顔を出すことや教育を受けることを禁じて批判を浴びている。だが、以前の北部同盟の連中は自分たちの部族以外の女性に対しては相当ひどい仕打ちをしていたようだ。はたして、どっちがマシなのか。

 しかも、北部同盟の中心部族はアフガン全体で見ればごく少数派。タリバンを構成する人々のほうが大勢だ。少数が多数を支配するとき、武力を背景に強権的にならざるをえない。何より、少数が多数を圧するというのは、多数決という民主主義の基本にも反する。それをアメリカはじめ自由主義国が援助するというのも、大きな矛盾と違うか。俺は恐らくカンボジアの二の舞になると見ている。

 現在のカンボジアは国運軍が入った結果、内戦は終結したものの、その結果 として経済は崩壊し、今や自国の通貨は街の屋台でもまったく通用しなくなっているという。おまけにエイズが急増、タイ島の国境付近には10数のカジノまで出現している。

 要するに自由主義社会がもたらすものとは、その程度なのだ。武力まで使って押しつけるほど立派なものではなかろう。

「たかだか数百年程度の歴史しかない国に文化などあるはずがない。だからアメリカは信用できない」というアウトローたちの思想も極端ではあるが、こと今回の問題に関して言えば彼らの冷めた目は大いに参考になる。

            (アサヒ芸能 11月1日号 キツネ目事件調書)